2006年8月17日木曜日

映画 「白バラの祈り」


ドイツ映画「SOPHIE SCHOLL」を観た。
クレモンのオピアム、オペラキー、ダりンハーストDNYで上映中。邦題は「白バラの祈り」というタイトル。
37歳のマルクテムント監督による映画。タイトルのゾフィー ショールとは、実在した反戦活動家の名前で、21歳の若さでゲシュタボに逮捕されて、処刑された女性。

ゾフィーは、1943年のミュンヘンで、ヒットラーの末期的現状を訴えるビラをまいて 兄とともにゲシュタポに現行犯で逮捕される。それから地下組織 白いバラのメンバーとして処刑されるまでの5日間をカメラが追った映画だ。

兄は、医学生なんだけど、前線で、兵士たちが士気を失っている悲惨な状況をみて、ドイツはこの戦争に勝てないと判断、非戦を訴えるため地下組織にはいる。ゾフィーは、ヒューマニストの町長だった父がゲシュタポから迫害されるのをみて、また町の精神病院から患者たちが処分されるのを見て、ナチズムは間違っていると考え、地下組織で兄に合流する。


この映画の素晴らしいところは、ゾフィーが取り調べ刑事や、裁判官の厳しい尋問に答えるうちに、ナチズムの純血主義や、ドイツ優越主義が 案外 もろい何の根拠もない思想であり、ゾフィーの人間の良心にそった、人道主義の深さと堅固さを ゾフィー自身が正しい と確信を深めていくところにある。
たった5日間のうちにゾフィーの心の成長が映像を通してみられるのだ。逮捕、尋問、処刑という流れの中で、偏狭な考えの刑事や人の理論を押し付けるだけの裁判官の醜悪さが明確になって 誇りをもってギロチン台にひかれていくゾフィーが 圧倒的な存在感をもって迫ってくる。


処刑直前に かけつけた両親の向かって、ゾフィーは「DO NOT WORRY. I DO SAME.」といって、微笑む。どういうことかって言うと、 これは よく 学校で悪い事をした生徒が両親をよばれて、先生のまえで、ごめんなさいもうしませんDO NOT DO AGAINと言わされる。でも、ゾフィーは、「I DO SAME」と言う。この期に及んでも、ウィットに富んだゾフィー。 それを聞いて、父は、一瞬 笑いかけるんだけど、「お前を誇らく思うよ」といって、ゾフィーを抱きしめる。このシーン泣ける。わーと泣いてしまった。
そして、刑場にひかれていきながら、最後に兄にむかって、「TOMORROW THE SUN WILL BE SHINING」と言う。自分たちが いま処刑されても 明日は 必ず戦争は終わり 人々は自由を取りもどすだろうという信念を失わない。

いつもこういう映画を見ると 私だったら皆が右を見ているときに、勇気をもって前をまっすぐ見ていられるだろうかと自分に聞いてみる。
エイゼンシタインの戦艦ポチョムキンで 一斉に銃をかまえる軍隊に、ストライキの責任者は誰だ? 全員の死か?責任者一人だけの死か?と問われて、「責任者は自分ひとりです」」、と前に出て、死んでいった水夫になれるだろうかといつも自分に問ってみる。